分類3−2<加工食品2>

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 【ソーセージ】 【チョコレート】 【パスタ】 【蜂蜜酒】 【プディング】 【葡萄酒 (シャンパン、酒精強化ワイン)
【マスタード】 【麦酒(ビール)】 【冷菓、シャーベット、アイスクリーム】 【保存食・旅の食料】 


ソーセージ(腸詰め) (参考文献番号:
ソーセージの盛り合わせ(美味しかったw)
 腸詰めの歴史はこれまた長く、古くはホメロス作の叙事詩「オデュッセイア」にも登場します。ソーセージという言葉の語源は、古代ドイツ語で牝豚を意味する「sau」と、ハーブであり香辛料でもある「sage」が合わさって「sausage」という言葉ができたという説や、ラテン語で塩漬けを意味する「salsus」が語源であるという説、また「Sause」(塩水という意があるそうで)と「age」(年を重ねる)の合成語、つまり「塩水に漬けて肉を熟成させたもの」という意味だという説など、いろいろな説があるようです。ソーセージというとドイツのイメージですが、ドイツでソーセージが盛んに作られたことの要因として、ゲルマン民族が狩猟上手だった事、気候が涼しく乾燥しているので肉類の保存がしやすかった、刃物が優秀で肉をうまく切り裁くことができた、などなどいろいろなものがあるようです。どちらにしろ実際にドイツではソーセージ作りが盛んだったことには違いないようです。
 森に放牧してドングリをしっかり食べて太った豚は、ドングリのなくなる12月には冬越えの食糧のために屠畜され、その身体は肉から皮(ソーセージのつなぎ)、内臓(腸詰め用のケーシングに)から血液(ドイツなどには血のソーセージと呼ばれるものがあります。後述)にいたるまで有効に利用されます。まあこの有効利用の徹底度は、国や地域、裕福さの度合いなどによっても異なるでしょう。
 動物の腸は昔からソーセージ(ドイツではブルストと呼ばれたりしますが)の「ケーシング」(ソーセージの皮の部分)として使われてきましたが、実際には羊では小腸と盲腸、豚や牛では小腸、大腸、直腸、盲腸、膀胱、胃などが使われるようです。羊の小腸は比較的小型のソーセージ(ウインナーソーセージなど)に用いられ、豚の小腸は少し大型のソーセージ(フランクフルトソーセージ、サラミソーセージなど)に用いられます。ちなみにフランクフルトはドイツのフランクフルト地方発祥の比較的大きなソーセージ、ウインナーというのは、フランクフルトの職人がオーストリアの都市ウィーンでフランクフルトを広めてからよく作られるいようになった小型のソーセージを指す言葉だったようで、現代では小型のものをウインナーと言ったり、大きいのをフランクフルトと言ったりしてるようですね。
 ソーセージの種類にも様々なものがあり、長期保存を目的に燻製し乾燥させたドライソーセージ、保存するのではなく新鮮なうちに食べるのを目的とするドメスティックソーセージ、に肉を脂身やベーコンで巻いて蒸したり燻製したりしてケーシングに入れないタイプのスペシャリテなどが知られています。現代の大抵のソーセージはドメスティックソーセージってやつのようです。ちなみにサラミソーセージというのは、キプロス島のサラミスが発祥地といわれ、豚肉や牛肉を豚か牛の腸に詰めて、熱を加えず乾燥させたドライソーセージだそうです。
 個性的なソーセージの一つである「血のソーセージ」は、好きな人は大好きだけど、ダメな人は全然ダメというタイプの代物です。私自身、「多分」苦手だろうと思うため、食べたことはありませんが、話によると、生レバーのような食感で、生々しい風味だそうです。豚から採ったばかりの血は、脂っこくて結構どろどろなんだそうですが、それを漉してから、暖めたミルクや刻みタマネギ、塩や香草などを加え、牛の腸に詰める‥というより注ぎ込んで、等間隔に縛ってソーセージの形にしてたっぷり1時間茹であげるとできあがり。血の赤、ミルクの白、タマネギの黄色が混じって、ピンク色〜赤色になるのだとか‥。興味のある方は、是非食べてみて、感想聞かせて下さいw

 ソーセージに欠かせないもの、それは各種の香辛料です。ソーセージに使われるものとしては、ナツメグやマスタード、黒胡椒や白胡椒、生姜、シナモン、キャラウェイ、カルダモン、セージ、タイム、ガーリック、オニオンなどがありますが、香辛料が貴重品だった中世では、ソーセージとはいっても胡椒、シナモン、ナツメグ類はなかなか使えなかったことでしょう。塩を使えば多少はマシなものができたようですが、塩も安かったわけではありません。とにかく、胡椒類の使えない場合には、他の香草の類や、ニンニクなどをたっぷりと使ったようです。肉の臭みを消すのが、美味い腸詰めのまず第一の条件ですからね。
 私のワールドでもソーセージの美味い、有名な街とかがあったりします。その他にも、独特の香草を使った香り高いソーセージ作りが盛んな、ハーフリングの郷とかもあります。ソーセージは現代では親しみやすく、ポピュラーな肉類食品ですからね、やはりプレイヤーの食欲を刺激しやすいようです。美味いエールと美味いソーセージ、冒険から帰った冒険者を迎えるささやかながらも素晴らしい食事とは、こんなところにあるのかもしれませんね。


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チョコレート (参考文献番号:1112
 甘さとコク、香りが魅力的な褐色の物体。それがチョコレートです。ヨーロッパ社会にチョコレートが広まり、消費されるようになった頃は、チョコレートは食べるものではなく、「飲むもの」でした。湯に溶かし、たっぷりと甘味料を加えたホットチョコレート。それが伝来当時の最も一般的なチョコレートだったようです。
 ヨーロッパ人とチョコレートとの出会いは、スペイン人がアステカ王国(当時アステカではカカオは食品としてだけではなく、通貨としても用いられていたとか)を征服した時にまで遡ります。ルネッサン期、スペイン人が持ちかえったチョコレート(カカオ)は、バロック期になるとヨーロッパへ多く持ち込まれるようになり、広まっていきました。当時は一部の裕福な権力者たち、つまり貴族や一部の商人たちだけが、様々な砂糖や香草を入れたりして、いろいろと手を加えたチョコレートを飲んでいたようです。

 チョコレートの主原料はカカオです。カカオという植物は栽培が難しいものだそうで、多少の例外はあるそうですが、ほとんどの場合、赤道周辺の北緯南緯各20度までの間の地域でしかまともに実をつけないそうです。さらに赤道周辺地域であっても、標高が高い場所などで夜や明け方などに気温が16℃くらいまで低下するような所でも栽培は難しいようです。カカオの木は一年中水分を必要とするため、乾期など雨の少ない時期があるような気候では、葉が枯れて落ちてしまいます(本来は常緑樹だそうですが)。当然、不適地で栽培されたカカオは、生育に障害が発生するばかりか、様々な病気にかかりやすくもなってしまうようです。
 カカオの木には非常に多くの、それこそ何百もの花がつくそうですが、自然環境では小さな虫に受粉を頼っているらしく、そんな虫たちがいないような環境では、まともに受粉する花は全体の数パーセントであるようです。カカオの花そのものは一年中受粉が可能なのですが、カカオの実がなり、「莢」が充分に熟すまでに半年近くかかり、さらにその実は収穫まで1カ月近く木に付いたままになっているそうです。またさらに収穫した実は時間をかけた様々な工程を経て加工されることになるため、昔はカカオの実は年に2回くらいしか収穫できなかったようです。ただし、現代では様々な技術が開発されているようで、必ずしもこの限りではないとか…。
 カカオの実の莢の中には柔らかくて白い果肉があり、その果肉に包まれるようにして40〜50粒前後の種子が入っています。この種子がチョコレートの原料となるようです。種子を包む白い果肉が美味しいらしく、リスやネズミなど動物たちに狙われます。ただし肝心の種子は植物性アルカロイドのために苦く、これらの動物たちは食べないようです。このため種子はそこらに放り捨てられ、自然界ではこうして自生範囲が広がって行ったもののようです。

 さて、収穫された種子、つまり「カカオ豆」は50℃くらいの高温環境で1週間くらい保管され、その間に発芽させ、次いで発酵させられます。ちなみにこの時の「発芽」があのチョコレート特有の風味を出すために必要なものなのだそうです。さて、この後カカオ豆は1〜2週間かけて乾燥させられます。この乾燥工程を経ると、カカオ豆は半分くらいの重さになります。乾燥させられたカカオ豆は1〜2時間をかけてゆっくりと焙煎されます。この焙煎工程もまた、チョコレートの風味を出すためには欠かせないものだそうです。焙煎され、さらに水分が飛ばされて濃い茶色になったカカオ豆は脆くなり、味的には渋みがかなり少なくなります。この状態にまで加工されたカカオ豆は「カカオ・ニブ」と呼ばれます。カカオ・ニブから薄い殻を取り除き、すり潰してチョコレート原液が作られます。
 カカオ・ニブの構成成分の半分くらいは脂肪分だそうです。19世紀になるとファン・ホウテンという人物が、この脂肪分を取り出す機械を発明し、以降このタイプの機械が使われるようになります。この取り出された脂肪分が、よく表示などで目にすることもある「カカオバター」また「ココアバター」と呼ばれるものです。なお、この機械を発明した人物の名前は、今もココアのブランド名として残っています。そう「バン・ホーテン」(英語読み)です。

 ヨーロッパでは、チョコレートには一種の薬効があると考えられていました。事実、チョコレートには抗鬱作用や強壮作用、抗ストレス作用をもつ成分が含まれているのは本当のようです。また摂取する者に軽い興奮をもたらす作用もあるようです。このためか、チョコレートには催淫作用があると考えられ、媚薬としても飲まれていたということです。媚薬としての実際の効能については怪しいものですが、植物性アルカロイドを含む様々な成分を含有しているのは確かなようですね。
 「コーヒー」の項でも述べていますが、ヨーロッパでは16世紀半ばくらいから、コーヒーを飲ませる専門店が登場し、やがて各地の大都市へと広がっていったようです。これらのコーヒー店で供されたのは最初はコーヒーだけでしたが、やがてチョコレートも取り扱うようになったらしく、そこではやはりホットチョコレートが飲まれていたようです。ただし、チョコレートが一般に広まったのは17世紀の半ばになってからだそうですから、実際に店で取り扱われるようになったのも、もしかしたらこの頃からなのかもしれませんね。
 中世風ファンタジーにチョコレートが登場することはあまりなさそうですね。ただしカカオそのものは南アメリカでは古くから消費されていたもののようですから、要は一般世界との「出会いの時期」が問題なのだと思います。つまり「そのワールド」で、例えば「この王国には、100年も前に南方の異国からカカオ豆とチョコレートがもたらされ、今ではチョコレートは少し金を出すことができる者なら誰でも店で飲むことができる」などという事になっていれば、充分一般的にチョコレートを登場させることができるという事になるでしょう。現代では、各種成分やポリフェノールなど、健康面でも注目されることのあるチョコレートですが、ファンタジーで「異国の飲み物」や「贅沢な飲み物」などとして登場させるのも悪くはないでしょうね。その魅惑的な香りは、人間だけでなく、様々な種族をとりこにするかもしれません。


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パスタ (参考文献番号:1011
 今更言うまでもありませんが、パスタは小麦粉を練ったものを茹でて作った食べ物ですね。大昔、中世より古世よりもずっと前から、「麦粉を茹でて」作った食べ物というものは存在していたようです。麦の粉を煮て粥のような物を作っていて、煮たて過ぎて湯が蒸発し、残った麦粉を茹でたものが固まり、固形状の物になってしまい、それを食べた事もあったでしょう。やがてそれは1つの食品として発達していくことになったようです。
 パスタといえばやはりイタリアでしょう。パスタが「パスタ」という形でイタリアで生まれたのは西暦100年頃だそうで、当時は貧しい人達の食べ物だったらしく、ソースも何もつけずに手づかみで食べていたようです。やがて細い棒に巻きつけ、管状など様々な形に作ったり(マカロニ等ですね)、パスタの中に調味した肉などを入れて茹でたりするようになりました。餃子風パスタとも言える「ラビオリ」などは、13世紀くらいに登場したようです。ところが16世紀になって、南米からもたらされたトマトがヨーロッパに上陸しました。パスタとトマトの劇的な出会いはパスタを世界的な料理へと発展させることになりました。ちなみにその仲人役となったのはオリーブオイルだそうです。こうしてスパゲッティ料理の原形ともいうべき「スパゲッティ ポモドーロ」が完成することになりました。
 つまりトマトが伝わる前のパスタはとても貧相な食べ物であったということのようで(ラビオリタイプは例外かもしれませんが)、ファンタジー世界でパスタが華やかな扱いを受けられるか否かは、即ちトマトが食用として流通しているか否かという問題になります。実際、トマトへのこだわりというものは現代のイタリアにも受け継がれているらしく、美味しいトマトがある季節にはどの家庭でも生トマトでソースを作るそうです。それが日本の味噌汁と同様の「おふくろの味」というものなんだそうです。話は戻りますが「冒険者の酒場でパスタを出したい」と熱望されるDMなら、そのオリジナルワールドではトマトは既に珍奇な植物ではなく、一般にも食用として流通しているということにしてはいかがでしょうか。そうすればパスタは味気ない食べ物ではなくなっているはずですからね。実際、D&D(R)の公式ワールドの中にも、イタリアのメディチ家の時代などを多少なりともモデルにしていると思われる国があります。そんな国ではもしかしたら、既にパスタが美味しく食べられているかもしれませんね(笑)。


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蜂蜜酒(ミード) (参考文献番号:17
 「ミード」「ミョード」(mead)などと呼ばれるお酒です。蜂蜜を発酵させて作られるお酒ですが、柑橘類などの果汁や生薬、香料を加えて味を調整したりすることもあります。この蜂蜜を発酵させて作る方法が主流だったようですが、一部では蜂蜜に葡萄酒(蒸留技術が広まってからは時にブランデー)や生薬、香料などを加えるという作り方もあったようです。
 インドやヨーロッパ語系の民族には、結構古くから伝わっている飲み物だとか。時には神々のための特別な飲み物として扱われたりもしていました。これに起因してか、特別な儀式(魔術や古い信仰に係わるもの)において断食を行う場合に、例外的に飲むことを許される食品とされることもあったようです。今でもイギリスなどでは、この伝統を受け継いで「ミードワイン(Mead Wine)」「ミードリカー(Mead Liqueur)」と呼ばれるものが作られることがあるようです。
 この蜂蜜酒というやつはケルトやヴァイキングものの映画や小説にも登場し、オーディンをはじめとする北欧の神々も飲んでいたとされていますから、それくらい古くから親しまれていたのかもしれません。実際、温めた蜂蜜酒なんか、いかにも冷えた体を内側から暖めてくれそうですね。生薬や香料、そして何よりたっぷりの蜂蜜が入ってますから、飲み物というより栄養たっぷりの食品としての価値もあるでしょう。
 蜂蜜酒は発酵が進むにつれて、その味も甘いものから酸味のあるものへと変わっていきます。この味の変化は、酵母の活動によって糖が消費されることによって起こるもので、当然ながら酸味が出るくらいまで発酵が進むと、そのアルコール度数も結構高い(ワインくらい?)ものになるでしょう。
 エールやワインに比べればマイナーな感は否めませんが、小説などのファンタジー作品や、ゲームの中での酒場のメニューなどにもその名は登場しています。この栄養価の高い飲み物は、戦いや行軍で疲れた冒険者の体を癒してくれることでしょう。D&D(R)では「ジャイアントビー(巨大蜜蜂)の蜂蜜」には回復効果があるという設定になっていますから、これを原料として使った「回復効果を持つ蜂蜜酒」なんてのもいいかもしれません。実際に回復系のポーション作成の手順として、最初にこの蜂蜜酒を作るという手順を加えるなど、なかなかそれらしい設定といえるでしょう。

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プディング (参考文献番号:1120
 「プディング」という言葉を聞いて皆さんはどんなものを想像されるでしょうか?黄色くて、つぶれた円柱のような形をしてて、上にカラメルが載ってて…容器の底についてる「ポッチ」を折ると綺麗に皿に出てくる甘いデザート…。今でいう「プリン」てやつですね(笑)。
 もともと「プディング(Pudding)」という食べ物は、今日一般的に知られているような甘〜いお菓子を指す言葉ではありませんでした。昔のイギリスの主婦の皆様が、パン屑やら余った小麦粉などをすぐに捨ててしまわず、それらと干し葡萄などのドライフルーツ、卵や果物などなど、まさにその辺にある余った食材とかあり合わせの材料を混ぜこね、塩や香草類、スパイス(その経済力があれば)などで適当に味付けして、布で包んで蒸したり煮たりして形作った食べ物のことを指していたのがもともとの「プディング」のようです。また、長期間に出た船乗りたちが、残り物の食料を混ぜ合わせて作ったものがもともとの「プディング」だという説もあります。このタイプのプディングは随分と昔、5世紀以前から既に一般家庭で作られ、食べられていたそうです。「余りもので作った食べ物」が始まりのようです。
 作った後は、布に包んで吊るして干しておけば、意外に1年以上も保存できたようで、旅の保存食としても携帯された事もあるようです。イギリスでは、お祭の際にプディングを食べることもありますが、その時に食べるのは前の年に作ったプディングで、その年には翌年食べるためのプディングを作るのだと聞いたことがあります。
 プディングにはいろいろなタイプがありますが、これは各家庭の個性ともいえるものではないでしょうか。お菓子的なプディングのほかにも、たっぷりと挽肉を入れた、ソーセージのようなプディングもあります。
 現在でも、小麦粉や卵、乳や塩、牛の脂などを混ぜこねてオーブンで焼いたものなど、様々なものがイギリスなどで食べられています。このプディングの登場は、12世紀ごろであるといわれています。やがて時代が進み、19世紀くらいになると、砂糖をたっぷりと使った「甘い」プディングが作られるようになっていきます。このくらいになると、プディングは既にそれが1つの料理のジャンルとして認識されているようです。甘くて美味しいプディングは、イギリスのお母さんたち手作りの優しいおやつなんでしょうね。ただプディングはあくまでも庶民的な味、もともと生活の知恵的なところから生まれたものであり、デザート、お菓子としてのプディングは、伝来した先のフランスにおいて確立されていったようです。
 プディングは比較的古くから作られ、今に伝わっている食べ物ですね。ファンタジー世界でも、家庭的な酒場などではメニューの1つとして食べられるかもしれません。もちろん、それも酒場によって様々で、いつも同じ材料で作られる定番メニューとしてのプディングとか、その日の食材の残り方によって材料が変わる、ほんとに家庭的なプディングとか…。いろんなものがあるんではないでしょうか。
 そういえばD&D(R)にはブラックプディングというスライム系のモンスターがいますね。黒いプディングという事ですが、一見した見た目が「蒸し上がった直後のぷよぷよしたプディングのような質感」で、加えて色が黒かった…そんな安直なネーミングの云われだったのかもしれませんね。的を得ているような気もしますけど(笑)。(実際、ブラックプディングっていう料理もありますね)


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葡萄酒(ぶどう酒、ワイン  シャンパン及び酒精強化ワイン含む (参考文献番号:1743 関連項目→葡萄(ぶどう、ブドウ)

2005, Beaujolais Nouveau, Cuvee Superieure 葡萄酒、つまりワインはブドウの実を潰して果汁を搾り発酵させた酒で、10〜15%前後のアルコールを含みます。果皮(葡萄の皮ですね)や種とともに貯蔵容器に貯蔵しておくと、果皮に付着していた野性の酵母の作用によってアルコール発酵が起こり、果皮からアントシアニンとかいう色素が溶け出して赤く色づきます。白ワインは、皮などを取り除いてから、果汁のみを発酵させたものです。ちなみに麦酒の場合は、まず最初に酵母の餌の「糖」を作らなくてはなりませんが、ブドウの場合は最初から糖(甘いですから)がありますので、この過程はありません。

 ワインの起源にもいろいろな話がありますが、旧約聖書に登場する「ノアの箱船」がコーカサス地方の山地に漂着し、そこに生えていたブドウを使ってノアが作ったワインが、葡萄酒・ワインの起源だという(ずいぶん物語的ですが)説もあります。実際、コーカサス地方では、今でも古式ゆかしい方法でワインが作られているそうです。また、ワインの起源は古代エジプトにありという説もあり、こちらは遺跡などからも、ワインの醸造施設などが発見されているようです。実際、紀元前5〜6千年前くらいからワインが作られていたといわれており、私たちの想像する以上に古くから、人間はワインを飲んでいたと考えられています。

 ノアがワイン醸造家の始祖であるという伝承の真偽はともかく、ワインは、ずいぶん古い時代から、ビールが発明されるよりも前から作られ、飲まれていたのは間違いないようです。ワインは、元々ブドウに含まれている糖分が酵母によってアルコールになるため、「糖化」という工程が必要なビールなどと違って、製法がシンプルです。このことからも、ビール類よりも先に人類に発明(発見)され、飲まれていたというのも頷けますね。
 ローマ帝国の時代にも、すでにワインは広く一般的に飲まれるようになっており、ブドウ&ワインの生産振興が図られていたようです。ローマの支配地が広がるに従って、ブドウの栽培とワイン生産が広まっていったともいわれ、ヨーロッパでは、そのために水運の利があった河川沿いにブドウ産地ができていったという説もあります。中世の頃には、ワインなんてとっくにヨーロッパ中に広まっていたことでしょう。ただし、戦乱等により国土が荒れていた時代(地域)では、ブドウの栽培そのものが難しくなったこともあったようで、そんな頃(ところ)では、ワインの生産量も減少していたことでしょう。

 ファンタジーでもワインは頻繁に登場するアルコール飲料です。酒場にもほぼ必ず置いてあるでしょうし、多くの地方では飲料水よりも安く手に入る飲み物でしょう。ヨーロッパの多くの地域では、飲用に適したおいしい水を手に入れるのがなかなか難しかったともいわれています。栽培等によって豊富に手に入るブドウ果汁等を利用して作られるワインは、他の醸造飲料などとともに、主な飲料の一つとなっていました。ワインの飲み方も、ストレートよりも水で割って飲むことが多かったようですから(後述)、割る分量によってはアルコール度数も低くなり、まさに水代わりでした。飲用にあまり向かない水でも、ワインと合わせれば薄まって飲めたということなのでしょうか(要 更勉強)。


ワインの水割り
 ワインといえば何やら上品なイメージがあるかもしれませんが、中世では必ずしもそうではありません。騎士たちでさえ、食事の際には肉をがっつき、ワインをガブ飲みしてたようです。上品かどうかは、あくまでも飲む人次第という事ですね。
 ちなみに、ヨーロッパの古い時代では、ストレートで飲まれることは少なかったようです。1世紀頃のギリシャ、ローマでは、ワインは水か湯で割って飲むべきものだったようで、ストレートでワインを飲むことは「無教養な者のすること」とさえ言われていたそうです。
 まあ「無教養うんぬん」はともかく、実際のところ、ギリシャ、ローマの時代のワインは、素焼きの壺(アンフォラなど)に入れて保存されており、乾燥した気候のせいもあって、ガンガン蒸発しまくっていたため、自然と濃縮されて(味わいもアルコール度数も)濃いものになることが多かったようです。こんな理由もあって、ワインの水割り(湯割り)は一般的なものでした。
 ちなみに、この時代、ワインを水や湯で割るときの割合は、「ワイン1:水(湯)2〜3」くらい(つまり、3〜4倍希釈)だったそうです。いくら蒸発等によって濃いワインになっていたとしても、3〜4倍に希釈したんじゃ、さすがに元のワインよりは薄くなってたんじゃないでしょうか。まさに、水代わりに飲めるものになっていたと思えます。
 もう1つ、ちなみに当時のギリシャでは、腐敗を防止するという目的で、「海水」や「松ヤニ」が加えられることもあったようです。海水で塩味の効いたワインってのも、あったんでしょうね。なお、松ヤニを加えたワインというものは、現代もギリシャで飲まれています。これは「レツィーナ」と呼ばれるワインで、ギリシャ名物の一つとなっています。
 さて、時代は下って、中世ヨーロッパ。この頃も、やはりワインは水で割って飲まれることが多かったようです。ただ、この頃には、ヨーロッパ各地で素焼きの壺にワインが貯蔵されていたというわけではなく、「蒸発うんぬん」という理由はあてはまらないように思われます。ただギリシャ、ローマ時代からの流れでワインを水等で割って飲むことが習慣化していたのか、醸造技術の未熟さからワインの味や濃さが不安定だったのか、また濾過技術が進んでないために飲み口が濃いワインが多かったのか。はたまた、水代わりに飲むため、ガブガブいけるように薄めていたのか。この時代、ワインを水等で割っていた理由は、はっきりとはわかりませんでした。おそらくは、これらの複合的な理由によるものなのでしょうが… 要勉強ですねw

 現在では醸造技術の進歩や原料ブドウの品種改良により、安定した品質のワインが作られるようになっていますが、昔は品質の安定という点では、ずいぶん怪しいものであった可能性は高いでしょう。アルコール度数も、必ずしも高いものばかりではなかったかもしれません。水代わりにガブ飲みされていたことを考えると、少なくとも「飲むときの状態」でのワインは、水等による希釈により、アルコール度数はたいして高くはなかったことでしょう。

ワイン と スパイス
 中世ヨーロッパでは、水で割る飲み方の他に、様々な香草やスパイス、蜂蜜、またはこれらを調合したものを加える飲み方がポピュラーだったようです。この混ぜ物習慣の理由の1つには、ワインの品質が挙げられます。高価で高品質なワインならともかく、安くて粗品質なものは、酸味や苦みがきつかったものが多かったらしく、そのままでは美味しく飲めなかったので、いろいろな混ぜ物で味や香りを調整していたようです。混ぜ物習慣の理由がもう1つ。それは、単なる嗜好です。充分な富をもっていた貴族などは、高価なスパイス類(コショウやシナモン等)をワインに入れて飲んでいました。それでなくても、充分な資金のある貴族達は、料理にスパイスをたっぷり効かせて食べていたようですから、飲み物にも同様のことをしていたのだと考えられます。しかし、コショウ入りのワインって美味しいのか?…

 香草やスパイス等、様々なものを加えたものは「グルートワイン」と呼ばれたりしますが、このグルートとは、「麦酒」の項で述べているグルートと同じようなものだったようです。最近では、「グルートワイン」なるものも売られていたりすることもありますが、なかなか個性的かつスパイシーで、面白い味わいでした。もちろん、昔のヨーロッパで飲まれていたグルートワインとは、様々な点で異なるものだとは思います。しかし、高価なスパイス(シナモン等)類を加えたワインは、低品質ワインの調整品の域を出て、既に嗜好品の領域でしょうから、当時の貴族の気分で飲んでみたりするのもいいかも。コショウはともかく、シナモン香付きのワインは、結構エキゾチックで興味深い味でした。
 私が買ったこのグルートワインは、暖めて飲む事が推奨されていましたが、中世ヨーロッパにおける同様のワインも、同じように暖めて飲まれることがあったのかもしれませんね。

 私のワールドでは、葡萄作りの盛んな街には、どこにでもその街の名産ともいえる葡萄酒があるという事にしています。それがごく自然だからです。冒険者たちのある者は街の酒場で名産の葡萄酒を味わい、ある者は友人や知人への土産にそれを買い込む…なんと自然な営みでしょうか(笑)。
 ちなみに、ワインの原料である葡萄(ブドウ)については、こちらを参照してください。

貴腐ワイン
 葡萄酒の種類で、貴腐ワインというものがあります。これは熟した葡萄をすぐには収穫せずにわざと放っておき、葡萄に貴腐菌(カビの一種)が付くのを待って収穫し、これを原料としてじっくりと発酵させたものです。貴腐菌の活動と葡萄の過熟によって葡萄粒内の水分は減少し、粒内の果汁が濃縮されるため、結果的に糖度が高くなります。こうして作られた葡萄酒は、とろみや香りも豊かなものになり、黄金色で非常に糖度の高いものとなります。
 
シャンパン&スパークリングワイン
 シャンパンは、白ワインになったものに、さらに糖(場合によっては酵母も)を加えて密閉し、ものにもよりますが8カ月くらい、さらなる発酵を行わせ(酵母は糖を餌として仕事をします)ワインに炭酸ガスを溶かし込んだものです。ただし、シャンパンというものは、フランスのシャンパーニュ地方で作られたものだけがこの名で呼ばれる事を許されるもので、それ以外は全て「スパークリングワイン」(英語圏では)です。ファンタジー世界では、シャンパーニュという地名があるワールドでのみ、シャンパンが存在する訳ですね(笑)。それ以外はやはりスパークリングワインです。私の記憶が正しければ、シャンパンの製法は、確かフランスのこの地方の修道院の僧(今も高級シャンパンにその名を残すドン・ペリニヨンという人)が発見したのだったと思います。

酒精強化ワイン
 葡萄酒の亜種的種類のお酒の中には、ポートワイン、シェリー酒、マディラ酒などというものがあります。これらは酒精強化ワインと呼ばれるもので、葡萄酒にさらにアルコールを加えて強い酒にしたものです。ポートワインを例にとってみましょう。これは発酵途中のワイン、または発酵が終わったワインにブランデー(葡萄原料の蒸留酒)を加えたものです。ブランデーを加えてあるため、アルコール度数は20度前後にまで上がっています。また、ブランデーを添加して発酵を途中で止めてあるため、糖分が残って甘い(でも強い)お酒になっています。
 ポートワインが生まれたのは17世紀ごろのポルトガルで、輸入国であったイギリスへ輸送する途中で傷んだりしないようにアルコール濃度を高くしたのがその始まりであるといわれています。ポートワインと呼ばれるにはいろいろな決まりがあるようで、ポルトガルのとある川の流域で育つ特定数種類の葡萄が原料でないとダメとか、熟成されて特定の港から出荷されたものでないとダメとか、厳しい審査をパスしないとダメとかポートワインの名前を得るのも大変のようです。ちなみにポルトワインもまた、ポルトガルで(様々な条件を満たして)作られたものにしか与えられない名称ですから、ファンタジー世界で酒精強化ワインを作ったらきっと別の名前で呼ばれることになるでしょう。また、蒸留酒(ブランデー)添加によって作られるものですから、製造しているとすれば他の蒸留酒と同様に、蒸留技術をもっているであろう者たち、錬金術師や魔法使い、ドワーフやノームたち(もしくは、彼らから添加用蒸留酒を購入した者)がその製造者になっていることでしょう。

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マスタード(からし) (参考文献番号:1020
 香辛料の多くは13世紀辺りに貿易によってヨーロッパにもたらされたものですが、マスタードはちょいと異なります。もともとマスタードは南ヨーロッパや地中海沿岸原産のアブラナ科の植物の種子です。そのためヨーロッパでのマスタードの歴史は古く、ローマ帝国の時代、かの皇帝ネロに仕えた軍医の著した医学資料にもその名があげられているそうで、新約聖書にもその名前は登場しているようです。フランスへはローマ帝国の占領によってワイン用の葡萄とともに伝わり、西暦800年くらいには、パリ近郊にある修道院でマスタード栽培が行われていたという記録もあるとのこと。ちなみに現代でも、フランスのマスタードは有名で、世界の練りマスタードのシェアの約半分はフランスで生産されているそうです。マスタードの種子を砕き、乾いた粉末状にする方法は13世紀に発明されました。マスタードには植物として白マスタード、黒マスタードなど何種類かがありますが、主に白マスタードが原料として使われるようです。マスタードにはカビや雑菌の活動を抑制する効果もあり、ソーセージなどを作る際にもよく用いられました。
 マスタードの刺激(辛味)は、種子の油分が水分と結びつくことによって発現するらしく、粒のままでは辛くないとのこと。そのため、辛味調味料として用いるには、潰して水を混ぜ、しばらく置いておく必要があるようです。また辛味は時間が経過するとともに薄れてしまうため、辛味を長期間維持するためにレモンや葡萄酒、酢などを加えたものが、現代で一般的な「練りマスタード」になります。マスタードには外皮を取り除かずに潰した色の黒っぽいものや、ニンニクや香草、香辛料を混ぜたものなど様々なタイプが作られています。しかし中世の頃には、香辛料や塩などをたっぷり使って美味しいものが作れたのは、当然ながら、それら贅沢品を調達することのできた、ある程度以上裕福な人たちだけだったことでしょう。


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麦酒(ビール) (参考文献番号:1747
歴代のmyジョッキたち 主に大麦の麦芽に含まれる酵素を利用してデンプンを糖化させた液体にホップを加え(ホップを加えるタイミングは様々)、さらに酵母によって発酵させたいわゆる麦酒です。起源はメソポタミア、エジプトに発し、ギリシャ、ローマを経てドイツ、ベルギーなどヨーロッパに伝わったといわれます。一般的には(あくまでも一般的には)ワインなどと比べるとアルコール含有量が比較的低いものが多いようです。
 メソポタミアやエジプトの「原初のビール」は、焼いたパンを素焼きの瓶などに入れていたところ、そこに雨水などが入り、天然酵母などによって発酵したできたものがその始まりと云われています。これらは現代のビールとは全く異なり、どちらかといえば「アルコール分のあるヨーグルト」のような雰囲気の飲み物だったという話もあります。キリンビール(麒麟麦酒株式会社)は、2005年に「ビール5000年の旅探求プロジェクト」の一環として、古代エジプトのビールの再現に取り組み、古王朝時代、新王朝時代のそれぞれのビールの再現を行いました。このときの出来たものは、色といい、濁りといい、イメージ的にはヨーグルトのようなものであったとのことです(キリン担当者談)。

 古代では、まず最初に発芽させた麦(麦芽)を砕いてパンを作り、それに水を加えて発酵させ、ビールを造っていたりしましたが、やがて時代が下っていくと、ビールの作り方は、だんだんと現代のような方法、つまり、麦の発芽(糖化)、麦芽粉砕、煮沸(ホップ投入)、放熱、発酵、貯蔵(熟成)という製法が確立されていきます。ちなみに古代には、パンを粉末にしたような「ビールの素」のようなものがあったそうです。これは麦芽パンの粉末のようなもので、これに水を加えると、比較的短時間で発酵、ビールができるという、インスタントビールともいえるようなものでした(近代ビールとは異なります)。

 近代ビールの製法(例)では、糖化された液「麦汁」はろ過された後、ホップを加えて煮沸されますが(煮沸の後記段階でも必要に応じてホップを投入)、この時、ホップから苦味が出て独特の風味が産まれます。なお、煮沸の初期で投入されるホップは苦味付け、煮沸の後記で投入されるホップは香り付けを主目的としています。
  煮沸された麦汁をろ過した原液を冷やしてから、酵母を加えて発酵させ、発酵の終わったものをろ過したものが(実際には貯蔵熟成されますが)、今で言う「生ビール」というものです。現代の大手メーカーのビン詰めビールは、65〜70℃くらいの熱を2時間くらい加え(「火入れ」と呼ばれます)たものです。この「火入れ」はパスツールによって考案された「低温殺菌法」と呼ばれる技術ですが、醸造物の熟成を促進し、その品質を高める効果もあるとの事です。しかしビン詰めビールなどない中世風ファンタジーの世界では(ファンタジーなので、有ってもいいとは思いますが)、この技術はまだ考案されていなかったと考えてよいのではないでしょうか。という事で、中世ヨーロッパ風ファンタジー世界のビールは、大抵「生ビール」です(笑)。(「瓶ビール」についてはこちらを参照)
大麦(原産地は不明ですが、おそらくヨーロッパ産、アメリカ産、オーストラリア産のいずれかです。)
 私がマスタリングする際のワールドでは、大麦畑が多く、良質のホップが入手できる、ビール作りが盛んな街には、どこにでもその街の名産ともいえる麦酒があるという事にしています。…あれ?葡萄酒と同じですね(笑)。つまりこれもごく自然なことなんですね。樽から木のジョッキに麦酒を汲み出し、髭を濡らしながら喉を鳴らしてゴクゴクと飲み干すドワーフ…。これぞファンタジー(笑)。なんだかソーセージ食べたくなってきます(笑)。
 麦酒の原料である麦芽は、主に大麦(二条大麦など)から作られます。粒の大きさが比較的均一でしかも大粒、さらに皮が薄く、安定したたんぱく質が含まれ、でんぷん含有量が多いこと。また発芽率が高くて均一で酵素の力が強いことなどの要素をもっているものが、ビール麦として優れているといわれるようです。


『ビールの色』
 現在、日本で一般的に飲まれているビールの多くは、「黄金色で透き通ったビール」で、ほとんどがピルスナーという種類(スタイル)のビールに分類されます。中世ヨーロッパのビールはどんな色だったのでしょうか。基本的にビールの色は、その原材料となる麦芽の状態に由来します。発芽させて麦芽となったものは、熱風等で乾燥(焙燥)させて発芽を止められますが、この際の温度が低いほど明るい色の麦芽に、温度が高いほど焦げた色の麦芽になります。現代では、ビールの色付けのために、これらの麦芽を組み合わせて使用しますが、温度調節など乾燥技術が進んでいなかった時代には、ほとんどの麦芽は濃く色付いていたそうです。つまり、作られるビールはどれも、(黒ほどではない)濃色ビールでした。
 イギリス発祥のビールのスタイルに「ペールエール」という、濃い黄金色から茶褐色のビールがありますが、当時の一般的なビールに比べて色が薄かったためこの名(pale=色が薄い)が付きました。前述したピルスナーはチェコのピルゼン市で生まれたスタイルですが、これが誕生したのが19世紀の半ば。イギリスのペールエールの誕生も19世紀半ばですから、少なくともこの頃までのビールの色は、ヨーロッパ大陸もブリテン島も濃色だった可能性が高いということになります。つまり、中世ヨーロッパのビールは、現代のビールのような「透き通った黄金色のビールではない」ということです。


『グルート』
 中世の時代のヨーロッパでは、ホップの代わりに「グルート」というものがビールへの匂い付けや味付けのために使われていたようです。この「グルート」とは、いろいろな薬草や香料を調合したものようで、これをうまく使って良質のビールを作るには多少なりとも(当時でいうところの医学的な)知識と様々な種類の材料が必要だったため、主に修道院などで作られていました。やがて14世紀ごろからビール作りに「ホップ」が使われるようになります。ホップはヨーロッパに入り、比較的簡単に手に入るようになり、それほど特別な調合も必要ではありませんでした。それ以外にも、ホップは様々な点でビール作りに適していたため、やがて「ホップビール」は「グルートビール」にとって代わってビールの主流になりました。
 2005年、麒麟麦酒株式会社(キリンビール)は、『「ビール5000年の旅」探求プロジェクト』の一環として、ヨーロッパに古くから伝わる文献等などを調査し、当時と同じような製法と原材料によるグルートビールの復元(再現)を行いました。このグルートビールは、一般販売こそされませんでしたが、一部の幸運な希望者はこれを味わうことができました。実は私は、幸運なことに、この「中世グルートビール味覚評価会」というものに参加することができ、この催しに参加した際の様子を、私のブログ
「Water Dragon's Diary II」でも紹介(2006年11月12日記事)したのですが、Dragon's Lair用に、より細かく記述した記事を作成しましたので、「麦酒」の項の関連ではありますが、独立記事としてご紹介します。
                 →→ 独立記事【「グルートビール」 〜中世グルートビール味覚評価会〜】
『他の材料』
 世界各地では、大麦麦芽以外の他の材料を使ったビールも伝統的に作られています。小麦麦芽、(麦芽化させていない)大麦や小麦、ライ麦、オーツ麦、ハーブ、スパイス、果物などなど。それらはビールに様々なフレーバーや味を与え、多くの人々の嗜好を満たしています。現在、多様な原材料を使ってビール作りをする国としては、ビール大国であるベルギーがメジャーどころですね。一方、ドイツ(当時のバイエルン公国)では、16世紀に「ビール純粋令」(ビールの原料には、麦芽、ホップ、酵母、水以外を使うべからず。)というおふれが出され、伝統的にこれに従ってビールが作られていました。
 近代日本でも、ビールの原材料に、米やコーンスターチなど、糖質として麦芽以外の材料も使われることが多くあります。元々、ビール原材料は多様なものですが、日本の大手メーカーのビールの副原料は、(ほとんどの場合)コスト削減や節税目的で加えられていることが多いようです。逆に日本の場合は、糖質部分の原材料は全て麦芽によるものであっても、法令で定められた原料以外のものを少しでも加えると「ビール」と表示できないことになっています。なので、世界的に評価の高いビールであっても、日本国内では「ビール」と表示できないものも多く有ります。

『ビールとエール そしてラガー』
 ビールを表す言葉として、「エール」、「ラガー」という言葉があります。よく違いが分からないという方が多いと思うので、その違いについてちょっと書いてみたいと思います。
(1)中世ヨーロッパ及びそれ風ファンタジー世界において
 何世紀か前の文筆家で、「エールは水と麦芽と原料にして作ったもの、ビールは水と麦芽とホップを原料にして作ったもの」という分け方をした人がいるようですが、これは正しくはありません。「麦酒(ビール)」の前書き及び「グルート」の項目で既に書いた様に、ビールの起源は古いものですが、古代においてはホップは使われていませんでした。ビール作りがやや洗練されつつ普及していたヨーロッパでも、ビール向けにホップが使われ始めたのが4世紀頃〜8世紀以降。普及したのが14世紀頃だそうですから、本来の「ビール」という言葉の意味において、ホップの有無は意味を成しません。ホップの伝来の時期という意味で、イギリスへの普及が遅かったため、比較的近代までイギリスではホップを使わないビールも存在し、イギリスではビールを「エール」と呼んでいたため、「イギリスではエールというイメージ」を持っている人が多いようです。  もともと、「エール」という言葉自体、意味するところは「ビール」と同義であり、この点では「ビール」も「エール」も同じものと言えます。中世ヨーロッパ風ファンタジー世界においては、ビールという語やエールという語をそもそも区別する必要はないかと思いますが、雰囲気で「エール」という言葉を使うのはいいと思います。  ちなみに「ビール」=「エール」と述べましたが、これは昔の話(中世ヨーロッパ的ファンタジーなどでは定義して区別するほどではないかと)。現代では、エールは「ラガー」という別の言葉に対応する用語として使われており、ビールのうちの1カテゴリーを表すものでしかないという事は知っていた方がいいかもしれません(次の(2)現代においてを参照してください)。
(2)現代において
 現代において、ビールを表す言葉を考えたときに、最も広く使われている言葉として挙げられるのが、「ラガー」と「エール」という言葉です。ビールとラガーはどう違うのか? ビールとエールはどう違うのか? ありがちな疑問ですが、重要かつ基本的な事柄についての疑問と言えます。一言でいうと、「ラガーもエールもビール」です。ビールというのは、麦芽の醸造酒である「いわゆるビール全体」を表す言葉です。そしてラガー、エールというそれぞれの言葉は、ビールの中の大きく分けられたカテゴリーを表す言葉です。つまり、大雑把にワインで例えるなら、ビールは「ワイン」、ラガーやエールは「白ワイン」や「赤ワイン」という、ワインの大きな種類を表す言葉といえます。
  [ラガーとは]  摂氏10℃前後で活発に活動する酵母(ラガー酵母とも呼ばれます)によって醸されるビールで、低温で熟成され、発酵〜熟成に1〜2週間くらいの時間をかけます。醸造過程の後期になると、酵母が澱の様に底の方に沈んでいくため、このタイプによる醸造を「下面発酵」と呼びます。ラガー全般の傾向としては、すっきりとした味わいをもつものが多いとされています。
 ビール全体の歴史において、今日「ラガー」と呼ばれているものの歴史は、実は比較的浅いと言われています。元来、ビールの醸造は常温に近い温度での発酵で生み出されていました。ラガービールの始まりは、15世紀中頃の南ドイツ。ビールが夏を越すと痛んで酸っぱくなってしまうため、山に穴を掘って氷を入れて保管したところ、美味いビールができたことから発見されたと言われています。ちなみに「ラガー」とは元々「貯蔵」という意味の言葉です。特定のブランドの固有名詞ではありません。
   [エールとは]  摂氏20℃前後で活発に活動する酵母(エール酵母とも呼ばれます)によって醸されるビールで、発酵〜熟成に2〜4日間くらいの時間をかけます。醸造過程で、酵母が塊のようになって上の方に浮かび上がってくるため、このタイプによる醸造を「上面発酵」と呼びます(この場合も最終的には酵母は底に沈むそうですが)。エールは、全般的にフルーティな香りや、様々な芳香や味わいを有している傾向があります。
   [その他のビール]  ビールを大別したときのカテゴリーは、主にラガーとエールで占められますが、他にも自然酵母を使って作る、酸味の強い「ランビック」や、特殊な酵母を使うビールがあります。
(3)まとめ
 [ラガー]の項で書いたように、低温発酵のラガーというものが確立されたのは15世紀以降です。ですが、この頃までには既に、「ビール」、「エール」という言葉は存在していました。つまり、もともと「ビール」と「エール」は共に麦酒のことを指す言葉として存在して、差異はその言葉が使われる国や地方の違いでしかなかったということ。先に「中世ヨーロッパファンタジーの世界では区別する必要はない」と書いたのはこのためです。  現代においては「ラガー」と「エール」ははっきりと下面発酵と上面発酵のそれぞれのビールを指す言葉として区別され、「ビール」はそれらを総称する言葉として使われています。少しややこしいかもしれませんが、ビールに係る言葉の使い分けはこのようになっています。

『瓶ビ−ル』
銘柄:エンゲルボック(ドイツ) 瓶詰めビールというものが最初に登場したのは16世紀の後半くらいなのだそうです。それまでもビールをガラス瓶に入れることはあったようなのですが、あくまでも「一時的に入れておかれる容器」でしかなかったようです。しかし偶然にもビールを瓶に詰めたまま保管して熟成させるという行為が見出され、やがて瓶ビールというものが登場することになります。しかし実際にはガラスそのものの高価さなど、様々な問題もあったことでしょうから、実際に瓶ビールが広まって行ったのはおそらくはだいぶ後になってのことではないでしょうか。ガラス瓶にビールを詰めるようになる前には、陶器製の瓶や壷などが使われていました。
 光はビールの品質を劣化させる要因の一つもあるため、ビールの容器には光を防ぐ工夫が必要です。陶器製ビンなら光は入りませんが、ガラス瓶の場合は、入ってくる光を少しでも減らすため、ガラスに色をつける必要がありました。現代でも、普通ビール瓶は濃い色のガラスが使われていますが、それはこのためです。
 ファンタジー世界でガラス瓶ビールってのはイメージ的にあれかな…(笑)。ファンタジーではやっぱり樽詰めが一番イメージ的には相応しいような気がしますね(あくまでもイメージの問題ですが)。ガラス瓶入りのワインが充分出回っている世界なら、実際にはガラス瓶ビールを出しても問題はないとは思いますけどね。

(余談)
 テレビや写真で、中世ドイツなどの麦酒文化の中で、蓋付きのビールジョッキを見たことがありませんか?「タンカード」とか「シュタイン」とか呼ばれる、「ちょうつがい」で開閉可能な蓋の付いた、金属や陶器など様々な材質でできたジョッキがこれです。
 あの蓋は何なのでしょう。この蓋はもともと、どうやら蝿が入らないようにするためのものだったようです。中世のころは、蝿がペストを運ぶと考えられていたため、これを防ぐ意味でこんな形のジョッキができたみたいです。後の世では、蓋を閉めておくことによって、飲むたびに新鮮な炭酸ガスの香を味わうことができるというので使われていたようです。ただ現在では、ドイツでもあまり使われていないようです。
(余談 その2)
  Water Dragonは、ビール話メインのblog「Water Dragon's Diary II」ってのもやってたりするので、よろしければどうぞ(以上、宣伝でしたw)

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冷菓、シャーベット、アイスクリーム (参考文献番号:13
 暑い夏、火照った体にはやっぱり冷たい食べ物が美味しく感じられてしまいます。古代中国の文献には、古代の朝廷は山の北側などに穴蔵を掘り、冬に集めさせた自然の氷を運び入れ、様々に工夫をこらして保存していたという記述があるようです。これによるとごく限られた人たちだけとはいえ、既に紀元前1500〜1100くらいの中国では、暑さを凌ぐために氷を食べたりすることがあったということになります。もちろん主たる食糧にはなりえませんから、デザート的な位置づけだったことでしょう。自然の氷もその氷ができた場所によっては多少の臭いや癖もあったかもしれませんから、蜂蜜や果汁などをかけたり混ぜたりして食べていたのかもしれません。牧畜が盛んな地域であれば、豊富にある家畜の乳も一緒に食べられていた可能性もあります。最初の「冷菓」は中国にあったようです。
 古代ギリシャのアレキサンダー大王は、ミルクや蜂蜜、葡萄酒などに氷を入れたものを食べるのが好きだったようです。また彼は長い攻城戦などの際、地下の穴蔵に飲み物を貯蔵し大量に雪を入れて飲み物を冷やし、その冷たい飲み物を兵士たちに与えて士気を向上させて戦ったともいわれています。紀元前4〜5世紀のころには他にも戦場で兵士たちに冷たい飲み物などを与えたとの記述があるらしく、既にこのころからギリシャなど地中海世界では冷やした飲み物を含む「冷菓」的なものが登場していたようです。やがてこの製法はローマへと伝わります。贅沢なローマ皇帝たちの中にはこの氷菓を好んで食した者も多かったとか。かの暴君ネロは、アルプスから万年雪や氷を運んで来させて保存しておき、その雪や氷を少しずつ使っては果汁や花の香露、蜂蜜や樹液などを混ぜた「ドルチェ・ビータ」という氷菓(かき氷みたいな感じでしょうか?)を作らせていたそうです。
 やがて時は移って中世のヨーロッパ、王侯貴族たちは「氷水」をしばしば飲むことがあったようです。やはり雪や氷を運んで来させていたか、冬の間から貯蔵しておいたのでしょうね。ちなみに、ヨーロッパへの氷菓文化はローマ時代からずっと伝わったのだという説もありますが、マルコ・ポーロによってシルクロードを通じて中国からもたらされたのだという説もあります。その後15世紀の後半頃になると、イタリアでは今日の「アイスクリーム」に近いものが考え出されることになりました。イタリアは「ジェラート」の国ですもんね(笑)。
 これ以外にも氷菓文化の伝播の経路には説がありますが、アラブ文化圏にも冷たい飲み物はあったようです。参考文献によると「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」には、「シャルバート」という飲み物が登場しているようです。ちなみに「シャルバート」という言葉は、「飲む」という意味のアラビア語「シャリバ」が変化したもののようです。アラビア文化圏からの伝播説は、11世紀にこの地方へと侵攻した十字軍によって「シャルバート」の作り方が伝えられたというものです。なるほど、つまり世界各地でいろんな氷菓文化があり、それが世界各地へと相互に伝わったということなんでしょうか?(笑)。でもおそらく最古のものは中国なんでしょうね(笑)。

 16世紀、イタリアで革命的な発見がありました。「硝石」というものを水に入れると、その溶解の際に周囲の熱を奪い結果として水が冷やされるということが発見されたのです。これが「寒剤」の発見です。やがて氷に寒剤を入れて急速に温度を下げる方法も考え出され、また硝石の代わりに「塩」を使っても同じ効果が得られることも発見されました。17世紀頃には果汁で作った飲み物「レモネード」が考え出され、人気があったそうですが、寒剤を使い、レモネードに卵白を加え、泡立てながら冷やして凍らせるというやり方も考案されました。この方法は現在の「アイスクリーム」の製法の考え方に近いものといえるようです。さらに時代は進み、蜂蜜を加えて泡立てた卵白を凍らせたものなど改良が進み、18世紀には、今のアイスクリームに近い、乳脂肪分を含んだものが作られるようになりました。
 16世紀、フィレンツェのメディチ家からカトリーヌがフランスへと嫁いだ際、彼女はメディチ家おかかえの菓子職人や料理人を連れて行ったそうで、婚礼パーティに並んだシャーベットはフランス貴族たちをたいそう感動させたそうです。こうしてアイスクリームは貴族の食卓には欠かせないものになっていき、さらにヨーロッパ各地へも伝わっていきました。ちなみにドイツでは、アイスクリームの製法は同業者組合「ギルド」によって秘密にされ、組合員以外は作ることも売ることも禁止されていたそうです。やがて18世紀、フランスではホイップクリームや卵を使ったアイスクリームが作られるようになり、今日のものに近いものができてきました。そして18世紀の末、ついにフランスで、世界初の「アイスクリームの専門店」が登場しました。ちなみにイタリアではジェラート、フランスではグラスと呼ばれていたものが「アイスクリーム」と呼ばれるようになったのは、記録によるとアメリカで書かれた手紙に登場するのがその最初であるようです(17世紀の終り)。
 ファンタジー世界でアイスクリームってのはさすがに妙ですね(笑)。でも雪などに果汁を混ぜたり、また果汁に蜂蜜や氷を入れたりという食べ物はあってもおかしくはないでしょう。暑い地方では、冷たいものは最高の贅沢でしょうから、ごく限られた人たちしか口にすることができないでしょうけどね。「寒剤」の発明と使用なんて、考えようによっては「魔術的」な要素をもつと思います。魔術師たちだけが作ることのできる「不思議な冷たい食べ物」…おお!これってファンタジーですね(笑)。他にも、ゲームによっては氷系の魔法や、温度を下げる魔法があったりしますから、これらを使って氷を作ったり、また氷を運んだり貯蔵したりすることもありえるかもしれませんね。普通の魔法使いがそんなことに魔法を使うかどうかは別として(笑)。手柄を立て、貴族の食卓に招かれた冒険者が初めて目にする冷たいデザート…そんな出会いもありかも(笑)。

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保存食・旅の食料
 D&D(R)をはじめとするファンタジー(ゲーム)には、通常食に対して保存食というものがよく登場します。これらは旅する者が携帯し、旅路の途中で食べるための、ある程度長期間の保存性を考慮して用意される食料品の総称です。その昔、日本で「TRPGといえばD&D(R)のことだ」って言われていた頃、コンベンションか何かの席で、どこかのマスターが保存食を説明する際に「缶詰」と言うのを聞いて「おいおい、中世っぽい世界で缶詰かい(笑)」と思った経験があります。これは英語版では保存食のことを「iron rations」と表記していたのを見て誤解した(多分そうでしょう)という事に加え、当時はまだ、現在のようにファンタジー世界や中世世界を扱った情報本があまり世に(一般的に)出ていなかったし、多くなかったというのが原因と思われます(当時は新紀元社の資料本なんてなかったですから)。それほどまでに、保存食というものがピンとこなかったんでしょうね。
 実際のところ保存食は、堅焼きパンや堅焼きビスケット、それに燻製肉や干し肉、ドライソーセージ、(地域にもよりますが)魚などの燻製、塩漬け、クルミなどのナッツ類にドライフルーツ、それにチーズなどで構成されているのではないでしょうか。あと当然ながら、これらとは別に水やワインなどの水分補給できるものも必要ですね(笑)。
 冒険者たちが携帯する保存食は、どこでも食べれて、保存性が良くて、重労働を支えるための充分なカロリーを補給できるものが必要です。しかしこんなものをずっと食べなくてはならない長旅もあることでしょうから、食べ続けることのできる程度の「味」も必要でしょうね。冒険者たるもの、少々不味くても食べるべき物は食べるべきです。そうでなくては、戦闘や行軍などという重労働はこなせません。「まずは腹ごしらえ」です。とはいえ、食べることがストレスになるほどに無茶苦茶不味いのは問題です。ある程度の味は必要でしょうね。「味の良さ」によって、保存食の値段を変えてみるというのも、面白いアイディアかもしれません。

 J.R.R.トールキンの指輪物語には、「レンバス」というエルフの行糧(こうりょう)、つまり旅の食料が登場しています。作中では「非常に薄い焼き菓子の形をしていて、それは外側がうすいとび色に焼け、中がクリーム色をしており、あら挽きの粉でできていました。」(新版 指輪物語4巻 旅の仲間(下2) 株式会社評論社発行、J.R.R.トールキン著、瀬田貞二・田中明子訳、124ページ5行目〜6行目から引用。)と記述されているように、薄い焼き菓子のようなもので、とても美味しく、少し食べるだけで長時間動けるだけの活力を与えてくれ、葉っぱにくるんだままにしておくと、長期間の保存にも耐えるようです。映画「ロード オブ ザ リング」の劇中に登場したレンバスは、パイ生地を焼いた物(薄めの菓子パン?)のように見え、「レンバス ブレッド」と言い表されていました。
 レンバスは、高エネルギーで美味という、理想的な保存食ですが、レンバスだけの食事が続いた後、サムワイズ・ギャムジーの口から「おら、今は違ったものが食べたくなりましただ。何にもついてねえ、ただのパンをちょっぴり、それからジョッキ一杯の−いいや、半杯でもええ−ビールがあれば、さぞ結構だと思うことでしょうて。」(新版 指輪物語7巻 二つの塔(下) 株式会社評論社発行、J.R.R.トールキン著、瀬田貞二・田中明子訳、12ページ5行目〜7行目から引用。)というセリフが出て来たところをみると、どうやらレンバスは、比較的しっかりと(おそらくは甘い)味のついた焼き菓子だったようにも思えます。いくら美味なレンバスでも、ずっとそればかり食べ続けていると、飽きてしまうようです。食べ飽きない味というのも、優れた旅の携帯食料の条件なのかもしれません。ゲームの中で、数値的には全く効果はないけど、長期間食べ続けても飽きないように工夫された保存食の詰め合わせなどがあれば、少しくらい値段は高くても、PCたちは買ってくれるかもしれませんね。
 ちなみに、指輪物語には、レンバスの他に「クラム」という食べ物についての記述もあります。クラムそのものは実際には作中には登場してはいませんが、ドワーフのギムリ曰く、「谷間の国の人間たちが荒野を旅する持って行くような」もの(「」内は、新版 指輪物語4巻 旅の仲間(下2) 株式会社評論社発行、J.R.R.トールキン著、瀬田貞二・田中明子訳、124ページ12行目〜13行目から引用。)だそうです。指輪物語の世界ミドルアースでは、この様な焼き菓子を旅の食糧として持ち歩く者が結構いたということですね。まあ、現実世界でも、硬焼きパン(クラッカーのようなもの)を旅の食糧として持ち歩くこともあったようですから、焼き菓子のバリエーション的なものが、携帯食糧として用いられていたとしても、それほど違和感はないでしょう。

 余談ですが、以前キャンペーンをやってた時のプレイヤーのキャラクターで、野外を旅する際は余分に馬を1頭連れて行き、そちらにたっぷりの食糧と炊事道具を積み、野営などの際には、干し肉や燻製を戻してシチューなどを作ったり、ドライソーセージとチーズなどを使ってスープを作ったりと、いろいろ工夫してるキャラクターがいました。さすがにダンジョンなどの中へは連れては行きませんが、このような取り組みは、考えてみれば、キャラクター的には当然の欲求から生じるものであり、とても評価できるものでした。ちなみにそのキャラクターは「調理」の技能を持っており、香辛料や塩などをしっかり買って持参していたという事を付け加えておきます(そこそこ成功した冒険者はある程度の金はありますからね)。

 随分昔、旅の途中で食糧を失い、飢えた冒険者たちが、狩猟で鹿を捕らえたコボルドか何かの一団を襲い、鹿肉を横取りするというのをTRPGで見たことがあります(そこに参加はしてませんでしたけど)。飢えた人間てのはすごかったです(笑)。皆さん、食料はしっかり余裕をもって用意しましょうね。

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